1.身近な自然の観察
(3)季節と生物
(115)山笑う・・・春の雑木林
「うわあー。雑木林がきれいですね。」
「そうだね。緑色のともしびが点々と見えるようだね。」
「なーるほど。緑色のともしびか。なかなかおもしろい表現だね。さすがだね,オー君。」
「なんだか,雑木林がかがやいて,笑っている感じですね。」
「なーるほど。笑っているか。これまたすばらしい表現だね。」
「おいらは,この季節の雑木林が一番好きなんだ。」
「そうね。冬の間は静かで,木の幹ばかりが目立っていたけど,今は,いろいろな緑色の世界ね。」
「え! 今,何て言ったの。」
「いろいろな緑色があるなって,言ったんだけど・・・。」
「いろいろな緑色! すばらしい。ブラボー!」
「モンタ博士,何をそんなに興奮しているんですか。」
「いろいろな緑色があるんだよ。コナラは少し白っぽい緑色だね。イタヤカエデは黄色の強い緑色をしてるんだ。それに,ミズキやエゴノキはあざやかな緑色だ。さらに,シデの仲間はやや赤っぽい緑色だ。つまり,・・・。」
「つまり,・・・冬の間は,どれも同じような冬芽をつけていた雑木林の木々たちも,それぞれの個性を主張しているということなんですね。」
「そのとおりだね。個性を主張している・・・。これまたなかなかいい表現だね。今の季節だけだよ。こんなにいろいろな緑色が見えるのはね。」
「そうか。夏になると,どれも同じようなこい緑色になってしまうね。」
「そうだね。だから,今のうちにあちこちをてくてくしながら,いろいろな緑色を発見するといいね。」
「ねえ,オー君。いっしょに,いろいろ緑の世界を発見しましょう。」
「よーし。OK。何色の緑色があるか。発見するぞ!」
中国の漢詩集より
『臥遊録[がゆうろく]』に,「春山澹冶而如笑,夏山蒼翠而如滴,秋山明淨而如粧,冬山慘淡而如睡」すなわち,「春山澹冶(たんや)にして笑うが如く,夏山蒼翠(そうすい)にして滴るが如く,秋山明浄(めいじょう)にして粧うが如く,冬山惨淡(さんたん)として睡るが如し」とあります。