1.身近な自然の観察
(3)季節と生物
2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(111)フクジュソウの秘密と実験結果
フクジュソウ
「お! きれいなお花だね。まるで,お日さまの光を受けて,笑顔をかがやかせている感じの花だね。」
「フクジュソウというのよ。学校のあちこちにさいているのよ。」
「え! どこにあるのさ。」
「校舎のシダレザクラの根元にもあるし,校舎の東の温室の近くにもあるわよ。それに学校の近くのおうちの庭にもたくさんさいているわよ。」
「そういえば,この前,お出かけした時にあちこちで見たっけ。思い出したよ。」
「フクジュソウは漢字で,『福寿草』と書いて,とても縁起がよい植物と言われているのよ。お正月の床の間にかざったりするのよ。」
「え! お正月? そんなに早くさくの。」
「ちがうわよ。お正月に見られるものは,促成栽培といって,人工的に温度をあたたかくして育てるのよ。ふつうは,2月~3月にさくのよ。」
「ふーん。そうなんだ。ところでさ,なぜ,この寒いのに花をさかせるのかな。虫だって,あまりいないようだけど・・・。」
「うーん。そうかな。虫は本当にいないのかな。」
「まあ,今の季節,いるとしたら,ハナアブくらいかな・・・。あ! 思い出したぞ。モンタ博士,アブの仲間は黄色い花が好きなんだよね。あ! そうか,フクジュソウはまっきっき(真っ黄っ黄)色の花だ!」
「そうだね。でもさ,ハナアブたちは,北風の中,寒くないのかなあ。どうなんだろうね。」
「そうだわね。そう言えば,不思議ですね。」
「ひょっとして,フクジュソウの花に何かひみつがあるのかな。」
「虫が花に集まるのは,そこに蜜や花粉があり,それを食べるためにやってくるんだったよね。だから,ひみつは花にありそうだね。」
「こごえるように寒くても,花の中って,けっこうあたたかいのかもしれないわね。」
「そうだ。花の中の温度をはかってみないか。1時間ごとにはかってみよう。」
「そうだね。花の中と外,それに,もう少し地面の高いところもはかってみるといいかもしれないね。」
「フクジュソウの花って,パラボラアンテナみたいな形をしているね。」
「そうだね。それは,何か,あたたかさをたもつのと関係あるのかな。」
「二人ともいいところに気がついたね。フクジュソウの花は,朝,太陽の光を受けて開くよね。この時,光っている花びらは,光をよく反射するんだよ。」
「反射してどうなるんですか。」
「反射して,花の中心のおしべやめしべのあるところに光を集めるんだよ。」
「光が集まるとどうなるんですか。」
「どうなると思う。考えてごらんよ。」
「光が集まれば,明るくなると思います。」
「それだけかな。明るくなるだけかな。」
「光が集まれば,あたたかくなると思います。」
「そうだね。それを今から実験してたしかめようね。」
「温度計で温度をはかればいいんですね。」
「それから,支柱を使って固定したほうがいいね。」
「そうだね。朝9時ころから1時間おきに記録をとることにしょう。」
「これは,楽しみですね。温度を折れ線グラフにしたら分かりやすいわね。」
・・・ということで,実験結果は次のようになりました。
「うわあー! すごい。午後1時の花の中の温度って23度もあるわ。」
「外は,13度だ。花の中は10度もあたたかいんだ。こりゃ,おどろきだ!」
「フクジュソウの花の中で,ハナアブたちはひなたぼっこしているのね。」
「おやつの花粉をちびちびなめながら,日光浴を楽しんでいるんだ。」
「そうだろうね。10度もあたたかいなんて,モンタ博士もおどろいたね。」
「あれ? 地上5cmと50cmでも少し温度がちがうみたいだけど,これは,何か意味があるのかな。」
「うーん。そうだね。考えてみようよ。どうしてだろうね。」
「地面から高いと,風に当たるから少し温度が低いのかしら・・・。」
「うーん。フクジュソウって,地面すれすれにさいているね・・・。あ! そうか。今の季節に花をさかせる花って,どれも背の低いものばかりなんだ。背が低いほうが,冷たい北風が当たらないからなんだ。」