3.動物の世界
(7)ハチ・チョウ・ガ以外の昆虫のなかま
(54)アワフキムシのアワって何だ?
アワフキムシ
「うわー,あわあわだわ。よく見ると,あわの中に黒いものが見えるけど・・・,なんだろう。」
「よく聞いてくれたね。この写真はおいらがとったんだ。なかなかうまいだろう。あわあわがついている木などを,花ちゃんは今までに見たことがあるだろう。」
「そうね,山に行ったときに,草のくきや低い木の枝に,これと同じあわを何度も見たわ。ところで,何ていう名前の虫なの。」
「これをアワフキムシというんだよ。ふだんは,あわの中にかくれているんだけど,今回は,おいらが写真をとるためにちょいと出てきてもらったというわけさ。」
「ふーん,何であわの中にいるんだろう?」
「そんなの決まっているだろう。あわの中にいた方が敵から身を守るのに安全だからだよ。」
「ふーん,そうなんだ。それじゃ,どうやってあわを出すの。」
「そんなの決まってるだろう。口から,たぶん,そうじゃないかな? え! あわはどうやってできるのでしょう。おいら,分かんないよ。あわてちゃうな,なんて,ごまかしてはいけない。こんなときには,ぼくらのモンタ博士を呼ぼうよ。」
「どうもどうも,モンタ博士を呼んでくれてありがとう。このごろ,花ちゃん,オー君が自分でどんどん研究しているから,モンタ博士は少しひまになってしまって,・・・。本当はちょっぴりとさびしかったのさ。」
「モンタ博士,アワフキムシのあわはどうやって作るの。」
「なるほど,アワフキムシか。あわというよりもつばって感じしないかな。」
「つばなんて,もー,やんなっちゃいますね。モンタ博士には・・・。」
「いやにならないでよ。つばといったのはね,このアワフキムシのことを,『カッコウのつば』とか『カエルのつば』と呼んでいる国もあるということさ。」
「ところで,つばはわかったけど,あわはどうやって作るの。」
「ごめんごめん。まず,この写真で見えるのはアワフキムシの幼虫だということさ。成虫はセミのように羽をもっていて逃げるからあわの中にはいないんだ。このあわの正体は何かというとね,おしっこさ。」
「おしっこ!」
「おしっこ!」
「おしっこといってもアワフキムシの場合,草のしるなどを飲んで,栄養を吸収したあとの水分ということさ。」
「どうやってつくるの。」
「まず,おしっこを少し体から出し,おなかにためた空気や分泌液を出し,足でこねこねするそうだ。10分もするとあわの隠れ家ができあがるということさ。」
「でも,あわだと,雨に流されないのかな。」
「それがだいじょうぶなのさ。せっけんのあわとはちがうらしいよ。それに,乾燥にも強くできているというから不思議だね。」
「おしっこをそのまま捨てずに,自分の隠れ家にかえちゃうなんて,昆虫の世界はサプライズなことばかりだね。」
セミのおしっこ
おしっこが出たので,その続きをしなくてはね。セミもよくおしっこをするといわれる。夏休みにセミをとろうとしておしっこをかけられた経験はだれでも持っていることだろう。では,このセミのおしっこの目的はというと,それほどりっぱな理由があるわけではなく,近くに敵がくると,おどろいて反射的に直腸が収縮し,たまっていたおしっこが押し出されるだけらしい。実際,つかまえようとしなくても,しょっちゅうおしっこをしているらしい。
その方が,飛ぶのに軽くなっていいのかもしれませんね。