３．動物 の世界
（7）ハチ・チョウ・ガ以外 の昆虫 のなかま
（7）ハチ・チョウ・ガ
（46）アリジゴクのお話
「オー君 ，この前 ，おうちの庭 でおもしろいものを見 たの。」
「なんだよ，おもしろいものって？」
「すりばちみたいなあながあってね，小 さな虫 みたいのがいるの。」
「えっ！ すりばちみたいなあな？」
「アリがそのすりばちの中 から出 ようとしているんだけど，できないの。」
「分 かった。アリジゴクさ。アリがそのすりばちの中 に落 ちたら，もう二 度 と出 て来 れないんだ。アリにとっては，地獄 なんだ。それでアリジゴクさ。」
「ほんと！？ それで，アリジゴクはその後 ，どうするの？」
「うーん。その後 は，くわしくはモンタ博士 に聞 こうよ。」
「そうしよう，そうしよう。モンタ博士 ，アリジゴクってなーに？」
「アリジゴクというのはね，ウスバカゲロウという虫 の幼虫 だよ。」
「ウスバカゲロウは，カゲロウ目 なのかな。」
「カゲロウ目 とはちがうんだ。ウスバカゲロウはアミメカゲロウ目というんだ。」
「昆虫 には，いろいろな目 があったけど，まだほかに目というのがあるということですね。」
「全部 で30くらいの目 があるんだよ。」
「昆虫 の世界 は奥 が深 いということですね，モンタ博士 。」
「そのとおりだね。ところで，そのウスバカゲロウやクサカゲロウなどのアミメカゲロウ目 の虫 は，とっても変 わった生活 をしているんだよ。」
「アリを食 べちゃうんでしょう。」
「そうだね。オー君 が言 ったように，自分 で作 ったすりばちのあなにアリなどの虫 をさそいこんで，それに落 ちたら最 後 。あなの真 ん中 にいて，落ちてきたアリの体 液 を吸 い取 って生 きているんだ。その後 は，ポイッと外 に出 しちゃうのさ。」
「それがほかの虫 とちがうところなんですか。」
「いやいや，そんなもんじゃなくて，このウスバカゲロウは幼虫 が成虫 になるまでに２～３年 かかるんだ。だけど，な，な，なんと，幼虫時代 はまったく，おしっこもうんちもしないんだ。」
「え！ ２年 も３年も一度 もおしっこやうんちをしないの？」
「そのとおりさ，不思議 だね。変 わった虫 だね。へんな虫だね。」
「ということは，超 フンヅマリ虫 というか，超便秘 虫 というか･･･。」
「まあ，そういうことだね。成虫 になって地上 にはいだして草 によじ登 り，羽 や体 がかたるまと，生 まれてはじめておしっことうんちをするのさ。」
「食 べるだけで，どうしておなかがふくらまないのかな。」
「うん，うん。不思議 なことがいっぱいなんだね。」
「そのとおりだね。ウスバカゲロウだけじゃなくて，ほかの虫 にも，人間 が考 えるのでは，変 だな，おかしいな，と思 うような，不思議 な生 き方 をしているのもいるよ。むずかしい言葉 でいうとね，生態 というんだけどね。これらは，みな数億 年 という年月 の中 でできあがった虫たちの生 き残 りのための手 段 なんだね。へんな虫というのは，本当 はすごい虫ということなんだよ。」
アリジゴクのくらし
ウスバカゲロウはカゲロウやトンボの仲間 ではなく，脈し目（みゃくしもく）に属 する昆 虫 である。酒 の徳 利 を思 わせる奇妙 な形 をした幼虫 は縁 の下 や大木 の根元 にすりばち状 の巣 をつくる。そして，すりばち状の穴 は住居 であり，ありを落 としこむわなでもある。スリバチムシ・アナボコボという方言 があり，よく特徴 をとらえている。アリジゴクの英名 はアント・ライオン（アリ狩 りライオン）と日本 の方言である地獄 虫 からできたともいわれている。
