3.動物の世界
(7)ハチ・チョウ・ガ以外の昆虫のなかま
(44)口で息をしないバッタのひみつ(バッタ・キリギリス・コオロギ)
「あ! オー君! ざんこく! 何しているの。バッタが息ができなくておぼれて死んでしまうわ。やめて。」
「だいじょうぶだよ。こうやっても,バッタは簡単には死なないんだ。ねー,モンタ博士。」
「そのとおり。どうしてなのか,分かるかな。花ちゃん。」
「分かりません。口で息ができなくて死んじゃわないの。」
「死んだりしないんだよね。バッタには肺がないんだ。ねー,モンタ博士。」
「花ちゃん,バッタは人とちがって口で息をしていないんだよ。」
「口で息をしていない? どういうこと?」
「すべての昆虫は口ではなく,おなかのところにある気門とよばれている場所から空気の出し入れをしているんだ。気門から取り入れた空気は気管というくだを通って全身に運ばれるのさ。」
「それじゃ,頭でなく,おなかのほうを水に入れれば死んじゃうわけね。」
「なるほど,なるほど,おもしろいことを考えるね。さすが,花ちゃん。」
「ところが,それでもなかなか死なないよ。どうしてかと言うと,バッタの体の中には空気がいっぱいつめこまれているからさ。」
「それで,体が軽くなって空を飛べるというわけさ。昔,モナリザのほほえみで有名なレオナルド・ダ・ビンチという人が,鳥のように大空を飛びたくて,羽根を使って実験してみたんだけど,けっきょく飛べなかったのは,人間が重すぎたからなんだよ。」
「なーるほどね,よく分かりました。ところで,バッタっていうけど,どんなバッタがいるの。教えて!」
「その前に,花ちゃんの知っているバッタって,どんなのがあるの。」
「トノサマバッタでしょ。それから,イナゴ,オンブバッタ。あとは? あれ,みんな緑色をしている虫だわ。バッタのとくちょうというのは,緑色というわけかしら。」
「そうとは限らないよ。スズムシだって,コオロギだってバッタの仲間だぜ。」
「それでは,ここで,バッタの仲間はどんなとくちょうがあって,どんな仲間がいるかをもう一度お勉強することにしよう。」
「昆虫の仲間分けのときに,甲虫目(こんちゅうもく)とか,りんし目(チョウ目)とかあったけど,バッタは何て言うのかな。バッタ目っていうのかな。」
「バッタ目でもいいけど,正しくは直し目(ちょくしもく)といって,羽がまっすぐだからだよ。でも,そんなことより,バッタ目のとくちょうをオー君に説明してもらおうよ。」
「まず,第一のとくちょうは,はねるための長くて大きくてじょうぶな後ろ足を持っていることかな。それから,不完全変態といって,さなぎにはならないで,幼虫と成虫がよく似ているんだ。大きく分けて,バッタ,キリギリス,コオロギの3つの仲間になるんだ。」
「バッタの仲間は昼間に動くものが多くて草食。しょっかくも短いんだ。ところが,キリギリスやコオロギの仲間は,夜行性で肉食・雑食のものもいて,しょっかくは長いんだ。それに,羽をこすり合わせて鳴く虫も多いね。」
「ところで,モンタ博士。この前,ミヤマフキバッタというバッタを見つけたんだ。そしたらね,羽がとっても短くてないみたいなんだ。どうしてなの。」
「羽は飛ぶためにあるんでしょ。バッタにジャンプ力があれば,無理して飛ばなくて,はねるだけでもいいんじゃないのかな。」
「そうだね。いろいろと自分で想像してみることは楽しいね。」
ミヤマフキバッタ
飛びはねる虫の世界チャンピオンは?
ノミバッタというバッタは体長5mmほどで,飛ぶことはできないが,跳躍力はとても強く,体長の200倍ははねるといわれています。人間の体長を1.5mとして考えた場合,約300mはねる計算になります。走りはばとびをやったら,世界チャンピオンになれることまちがいないでしょう。ノミバッタは,後ろ足だけが,異常に発達しており,砂地に多く見られます。なお,バッタ目は日本に250種ほどいます。