トウショキッズ 東書KIDS

  • HOME
  • みなさまへ
  • 保護者の方へ
  • 先生へ
花ちゃん・オー君・モンタ博士のてくてく自然散歩シリーズ
1.身近みぢか自然しぜん観察かんさつ
 (4)生物せいぶつ日本人にほんじんのかかわり
(28)スギと日本人にほんじんのくらし
花ちゃん
前号(ぜんごう)植物(しょくぶつ)仲間(なかま)()てクイズはとっても(たの)しかったですね。」

オーくん
「モンタ博士(はかせ)植物(しょくぶつ)()べるだけじゃなくて,ほかにどんなことに使(つか)うの?」

花ちゃん
「おうちを()てるときに,()はなくてはならないわよね。」

「そのとおりだね。日本(にほん)のおうちを()てるときには,スギやヒノキを使(つか)うね。日本は(めん)(せき)の70(パーセント)(やま)といわれているんだよ。その山のうち,80%がスギやヒノキを()えているのさ。」
モンタ博士

オーくん
「そんなにたくさん,スギとヒノキだらけなんだ。それで,花粉症(かふんしょう)とかになる(ひと)(おお)いんでしょ。」

花粉症(かふんしょう)原因(げんいん)はいろいろあるけどね。(いま)日本(にほん)(くに)でまったくの自然(しぜん)(はやし)とか天然(てんねん)(もり)とか()われているのは,本当(ほんとう)(すく)ないんだ。」
モンタ博士

花ちゃん
(おな)植物(しょくぶつ)ばかり()えてあっては,そこに()てくるほかの植物も種類(しゅるい)(すく)なくなってしまうんじゃないかな。」

「そのとおり。すばらしいことに()がついたね。むずかしい言葉(ことば)でいうとね,多様性(たようせい)というものが,()(もの)世界(せかい)では,とっても大切(たいせつ)なことなんだ。」
モンタ博士

オーくん
「ぼく,スギとヒノキの(もり)では,あまり(むし)とかとったことないもんな。」

「さらに,おうちを()てるためには,スギやヒノキが必要(ひつよう)といったけどね, このごろは,外国(がいこく)から(やす)()がいっぱい(はい)ってきてね,日本(にほん)の木のほうが値段(ねだん)(たか)いくらいなんだ。それで,(やま)仕事(しごと)をする(ひと)がへってきて,山がどんどんあれてきているんだよ。こまったことさ。」
モンタ博士

オーくん
「まったく,こまっちゃうね。スギやヒノキにはね・・・。」

「でもね,スギというのは日本(にほん)にしかない植物(しょくぶつ)なんだよ。それで,日本人(にほんじん)はスギにとてもお()()になってきたんだ。もし日本にスギがなかったら,日本の文化(ぶんか)発展(はってん)しなかったんだよ。」
モンタ博士

花ちゃん
「スギにとてもお世話(せわ)になったということは,どういうことなんですか。」

「むかしむかし,あるところにある(ひと)がいて,いろいろな()()て,なんとか,(いた)みたいなものを(つく)れないかな,板を()()わせて(ふね)が作れないかなとか(かんが)えたんじゃないかな。」
モンタ博士

オーくん
「それで,それで。」

「そのころは,()をたおしてとがった(いし)をかませて,木をさこうとしたんじゃないかな。ノコギリなんてまだないころだよね。」
モンタ博士

花ちゃん
「それで,それで。」

「いろいろな()でためしたんじゃないかな。マツとかサクラとかさ。そしたらさ,スギでやってみたら,なんとかんたんに(いた)にできることを発見(はっけん)したんだよ。これなら使(つか)えると(おも)ったんだよ。」
モンタ博士

オーくん
「いつごろの(はなし)なんだろうな。」

「2000(ねん),3000年,いや,もっともっと(むかし)かもしれないね。」
モンタ博士

花ちゃん
「それから日本人(にほんじん)はスギと仲良(なかよ)しになったのね。」

加工(かこう)しやすく,かるく,じょうぶで,日本人(にほんじん)屋根(やね)(いた)にしたり,(ふね)をつくったり,おけをつくったりして,生活(せいかつ)(ゆた)かにしてきたんだよ。」
モンタ博士

オーくん
「だから,スギは日本(にほん)一番(いちばん)たくさん()えられている()なんだね。」

「そのとおり,日本(にほん)植林(しょくりん)面積(めんせき)の40(パーセント)がスギなんだ。すごいだろう。むかしから,そして,これからもたくさんお世話(せわ)になると(おも)うよ。」
モンタ博士

花ちゃん
(なが)(なが)(れき)()()れば,(ひと)()はずっと仲良(なかよ)くしてきたんですね。」

「そうだよ。西洋(せいよう)が『(いし)文化(ぶんか)』の(くに)()ばれているのに(たい)し,日本(にほん)は,『()の文化』の国というからね。」
モンタ博士

オーくん
「ぼく,なんだか,スギが()きになってきちゃった。もう(すこ)しくわしくお勉強(べんきょう)してみようっと。仲良(なかよ)くしよっーと。」

スギは(にほん)本人(じん)()らしを(ささ)えて・・・・・・
(なが)めですが()(まん)して()んで! ウンチク(薀蓄)ある(はなし)です)
 スギは学名(がくめい)Cryptomeria japonica(クリプトメリア ヤポニカ)とあるように,日本(にほん)特産(とくさん)針葉樹(しんようじゅ)であり,世界(せかい)中探(じゅうさが)してもスギがあるのは日本だけである。西洋(せいよう)(いし)文化(ぶんか)といわれるのに(たい)し,日本は()の文化であり,その主役(しゅやく)はスギであった。
 西洋(せいよう)都市(とし)生活(せいかつ)には都市壁(としかべ)存在(そんざい)()かせないので,()市域(しいき)面積(めんせき)はどうしても(ちい)さいものにならざるを()ない。二階(にかい)三階(さんがい)()てはざらであった。その結果(けっか)(みず)補給(ほきゅう)(なや)まされただけでなく,排泄物(はいせつぶつ)処理(しょり)過密(かみつ)都市(とし)での(おお)きな問題(もんだい)となるのである。西洋(せいよう)農業(のうぎょう)では,日本(にほん)(ちが)って糞尿類(ふんにょうるい)肥料(ひりょう)にするのは,野菜(やさい)(ばたけ)果樹(かじゅ)(えん)(かぎ)られており,普通(ふつう)(むぎ)(ばたけ)には(すく)なくとも人間(にんげん)糞尿(ふんにょう)不用(ふよう)だった。当然(とうぜん)内容物(ないようぶつ)はいつもあふれがちになり,17世紀(せいき)のパリでは,ルーブルの中庭(なかにわ)階段(かいだん)にまで便(べん)がたまり,いつも悪臭(あくしゅう)をまきちらしていたとも(つた)えられている。一番(いちばん)やっかいなのは,三階(さんかい)四階(よんかい)などの住民(じゅうみん)便器(べんき)愛用(あいよう)し,日没後(にちぼつご)ともなれば,その内容物を(まど)からすぐ(した)街路(がいろ)()てる風習(ふうしゅう)のできたことだった。パリでは内容物をこぼす(まえ)に,三度(さんど)(みず)にご(ちゅう)()」と(さけ)ばないといけないという法令(ほうれい)()たそうである。また,内容物をまき()らし,それを(しょ)()するためにブタを(はな)し,()べさせたともいわれている。(みっ)(しゅう)した()()(もっと)(おそ)れられていたものは,伝染病(でんせんびょう)であり,衛生(えいせい)状態(じょうたい)劣悪(れつあく)であったのであろう,当時(とうじ)の西洋の都市人口(じんこう)限界(げんかい)は5~10万人(まんにん)だったそうである。
 日本(にほん)ではどうであったかというと,「慶安(けいあんの)御触書(おふれがき)」で百姓(ひゃくしょう)(たい)し,便所(べんじょ)(ひろ)くつくれ,屋敷(やしき)のすみずみにもつくれと糞尿(ふんにょう)肥料(ひりょう)のための設備(せつび)拡張(かくちょう)(すす)めており,当時(とうじ)からみごとなリサイクルが(おこな)われていたということである。
 1609(ねん)日本(にほん)(おとず)れたある外国人(がいこくじん)は,「日本には沢山(たくさん)都市(とし)があるが,その都市は(ひろ)くて(おお)きく,人口(じんこう)(おお)く,清潔(せいけつ)欧州(おうしゅう)の都市でこれに比較(ひかく)できるものはない。人口20(まん)の都市も多く,京都(きょうと)は80万江戸(えど)は100万をこえている。」と当時(とうじ)の日本の都市のりっぱさに感嘆(かんたん)している。(よう)するに,糞尿(ふんにょう)のみごとなリサイクルが清潔な都市を(つく)ったのである。
 近世(きんせい)になって,大阪(おおさか)でも江戸(えど)でも糞尿(ふんにょう)金銭(きんせん)売買(ばいばい)されるようになり,農繁期(のうはんき)()()りのために(せん)(ぎょう)(しゃ)(かつ)(やく)(はじ)めたのである。江戸も大阪も水路(すいろ)がよく(ととの)っており,スギの厚板製(あついたせい)平底(ひらぞこ)(ぶね)に,たくみにパッキングしたスギの(おけ)()んでかなり(とお)くまで運搬(うんぱん)できるので,そういう商売(しょうばい)成立(せいりつ)したのであろう。
 そのような風景(ふうけい)日本(にほん)のどこにでも()られたのであり,大都会(だいとかい)でも地方(ちほう)(ちい)さな(ちょう)でも糞尿(ふんにょう)大切(たいせつ)(あつか)われ,農地(のうち)(はこ)ばれたから,住民(じゅうみん)環境(かんきょう)(よご)必要(ひつよう)心配(しんぱい)もいらなかったのは,当然(とうぜん)であろう。人間(にんげん)家畜(かちく)排泄物(はいせつぶつ)のほとんどが農地(のうち)還元(かんげん)され,吸収(きゅうしゅう)されずに(あふ)()河川(かせん)池沼(ちしょう)流出(りゅうしゅつ)するのもきわめて(すく)なかったはずで,人間の住居(じゅうきょ)のまわりばかりではなく,周辺(しゅうへん)(りく)(みず)(きよ)らかであったと(かんが)えられる。
 以上(いじょう)のことから,西洋(せいよう)では一般(いっぱん)都市(とし)糞尿(ふんにょう)農業(のうぎょう)肥料(ひりょう)としては使(つか)われなかったといえる。そして,その最大(さいだい)理由(りゆう)として,液肥(えきひ)(ひろ)普及(ふきゅう)するための能率的(のうりつてき)運搬(うんぱん)方法(ほうほう)(とく)材質(ざいしつ)(かる)く,加工(かこう)しやすいスギという()使(つか)った適当(てきとう)容器(ようき)()かったことが(かんが)えられる。液体(えきたい)容器(ようき)開発(かいはつ)はスギという日本(にほん)特産(とくさん)樹木(じゅもく)があったればこそ,実現(じつげん)可能(かのう)であったといえる。
 西洋(せいよう)にも(おけ)のようなものはあったと(かんが)えられるが,それは,テレビなどによく()てくる地下室(ちかしつ)(なら)んだブドウ(しゅ)(はい)った(おお)きな(たる)である。さらに,(たる)にはいかめしく(おも)そうな(てつ)()までつけられているのである。日本(にほん)には(さいわ)いなことに欧州(おうしゅう)のような北方(ほっぽう)では(そだ)たない(たけ)というものがあった。スギの(おけ)に竹というものを使(つか)工夫(くふう)をしてしまうところがすごい。「スギにタケをつぐ」・・・()文化(ぶんか)発達(はったつ)させてきた日本人(にほんじん)英知(えいち)(こうべ)をたれるのみである。
   てくてく自然散歩シリーズ
このページの先頭へ